FUJI ROCK FESTIVAL'03

2002.07.26 ------> Made Of Stone

 1999年からだから、もう5年目の苗場。もう慣れたもんだと思ってたけど今年は勝手が違った。まず一つはチケット問題。なんと土曜日のチケットが売り切れた。ちょっとバタバタしたけど、なんとか入手。一枚余ってしまったので越後湯沢の駅で「チケット譲って下さい」の人に定価で売る。土曜日はホント沢山の人が困っていたみたい。そしてもう一つは天気の問題。金曜から参加していた友人より「地獄」とか「寒い」とか「最悪」との情報を得ていたので、相当の覚悟を持って苗場に乗り込んだ。

 宿の予約をしたのが遅かったので、今年の宿は越後湯沢駅の近く。荷物を置いて長蛇のシャトルバスに並び、現地についたらやはり曇り空というか小雨が降っている状態。低く垂れ込める雲。肌寒い空気。ま、とりあえず腹ごしらえ。もち豚ステーキ丼食って、今日1日ぶんの体力をどうか我に授け給え。

 もち豚食ってたら、レッドマーキーから大歓声が。電撃ネットワークがスタート。なんかよく見えないけどとりあえず凄いぞ。ケツで蛍光灯割ってるぞ。アロンアルファで手をドラム缶にくっつけてるぞ。南部さんは西が丘サッカー場で見たことあるけど、電撃をナマで見るのは初めて。とりあえず途中で退散。なんか食べたばかりなのに腹が減った。タコライスを食う。今年から出来た沖縄系の店は良質だった。グリーンステージ後方で、雨で抜かるんだ地面にレジャーシートを置く。東京都指定ゴミ袋でカバンを保護。

 とりあえずグリーンステージでは見るものもないので、泥濘の中を移動する。今年から出来たボードウォーク。ホワイトステージ横を通らずにフィールド・オブ・ヘブン方面に行ける。歩きやすくて良い。林の中を歩く感じが良い。ミラーボールのなる木も良い。ホワイトの音、ヘブンの音が少し聴こえる。そして辿りついたのがオレンジコート。ヘブンを更にまったりさせたようなステージ。Date Course Pentagon Royal Gardenがやってる、と思ったらサウンドチェックだった。ここのステージはスタッフも少なめで、出演者の手作り感があるみたい。ちょっとだけ聴いてヘブンへ。

 ヘブンでKEMURIやってるのを横目で見つつ、ホワイトステージへ。SHEENA & THE ROCKETSが爆裂してた。スゲエぞ、あなたたち何歳だよ。ドスのきいた声、ミニスカ、網タイツ、そしてギターをカッコよく弾かせたら日本でも三指に入る鮎川誠(適当に言ってます)。数曲聴いて、グリーンステージに戻る。凄い。何がって人が。去年のレッチリの日と同じくらいの人が続々と泥の中を入場している。グリーンでやってたのは山崎まさよし。結構いい演奏、というかバックも含めて凄い上手いのね。自分らのシートの上で気持ちよく聴いていたら少し寝てしまった。

 ようやく、前へ行く気になるステージ。ASIAN DUB FOUNDATIONがスタート。やっぱダメだ。無条件で盛り上がる。やっぱり好きだわ、この麻薬的な音。ジャングルとダブとラップ、混ぜたらこんなにかっこいいんです、だけじゃないのがADFの魅力だろう。所々、政治的な発言?が挟まれつつ、泥の中の客を踊らせる。最後はファック!ブッシュ&ブレアって言ってたな。別にイラク戦争がなくても、彼らの音楽にはいつも明確なメッセージが含まれているし、しかも音はやばい程に快楽的。MCの二人もすっかり堂に入ったパフォーマンス。ようやくフジロックがスタートした感じ。

 少し休んで、COLDPLAYが始まる。上手いねー、そりゃ売れるわねこれは。という訳で正当派すぎます、私には。遠くホワイトステージからANTHRAXの爆音が聴こえた。で、またオアシスで食事。沖縄そば。JHON SQUIREでも期待せずまったり見るか、と思ってたらいきなりレッドマーキーからギターリフと歓声が。これはStone Rosesの2枚目、"Second Coming"の2曲目のちょーZEPっぽい曲、"Driving South"じゃないか!何だよストーンローゼスの曲やんのかよ!という訳で会場内に猛ダッシュ。客少ねー。余裕で前へ。

 結論から言うと、この日の私的ベストアクトはジョン・スクワイアだった訳です。理由は勿論ローゼスの曲いっぱいやってくれたから。2曲目もなんと"Made Of Stone"だったし、ジョンのソロ作品を交えつつ(それも結構いい曲なんだけど)"How Do You Sleep","Fools gold",最後は"Tightrope"。まあFools Goldでは狂ったように踊ってる人が大勢いた。Made Of Stoneは大合唱だった。ジョン・スクワイアの声は粘着系の渋い声で、イアン・ブラウンより段違いに安定してうまい。ギターも勿論超絶、バックもいい演奏だった。ローゼスの曲を引き継ぐならやっぱり彼しかいないのかもしれない。ライブ中、迷彩服きた小柄な男が客に囲まれている。誰かと思ったらマニだった。ホントいい人なんだなマニ。かつての仲間のステージを(自分の出番がもうすぐだってのに)一般客と同じとこでこっそり見てるなんて。人が集まってきたので逃げちゃったけど、その後ろ姿にちょっと感動。ジョン・スクワイアの歌うストーンローゼスの曲は後ろ向きでも回顧主義的でもなくて(僕はそう聴いてしまっていたかもしれないけど)、ホントに真直ぐにいい曲だった。ギター仙人、ジョン・スクワイア。マンチェスタームーブメントの中での数少ない本当の天才のうちの一人の帰還。良かった。

 プライマルスクリームがスタート。マニはやっぱりさっきの迷彩服でベースを弾いてる。なんとなく迷彩柄=オシャレって思ってそうで恐い。ダイエーとかで買った服みたいに見える。恐るべしマンチェスター人のファッションセンス。ボビーは長髪になって随分とロックスターな感じ。ケビン・シールズは相変わらず大学院の助手みたいに腹にギター乗せてずっと繊細なノイズを鳴らし続けてた。既にビョーク待ちの客が相当前の方にいたみたいで、かなり機嫌悪そう。でもそれなりに後半盛り上げていくあたりなんぞ、すっかりライブバンドとしての貫禄も感じられる。最後にマニが「ジョン・スクワイアに捧げる」って言って"Movin'on Up"。最高。その後アンコールで出たよ"Loaded"。生楽器使う意味が全く感じられないんだけど、まあいいか、踊れれば。このあたりから雨が強くなり始める。仕方ない、こんな時はやけくそで踊るのだ。

 ビョークまでの間、雨がずっと降り続けた。前方はすごい人。俺は後ろのレジャーシートでまったり鑑賞予定。ノースリーブ+フットサルのゲームシャツ+ジャージ+ウィンドブレーカ+割としっかりしたレインコート。気付いたら5枚も着てた。それでもちょうど寒くなくていいくらい。イギー・ポップもちょっと見たいなと思っていたのだけど、ホワイトまで歩くのがキツそうなのでやめた。そしてついにビョークが登場。すごい生命体だ、これは。なんだろう?有り得ないリズムでダンスし、とてつもない声で雨のグリーンステージを静まりかえらせた。(その静寂に、イギーポップの雄叫びが聞こえるのが最高に可笑しかった)

 「ダンサー・イン・ザ・ダーク」という、映画全般への悪意に満ちた、あまりに救いようのないつまらん映画の救いはビョークだけだった。そしてライブ中、あの映画のサントラとおぼしき曲、その他ストリングスを交えて演奏された曲は俺には最高に退屈だった。グラハム・マッセイとかと組んでテクノでブイブイ言わせてるビョークが好きだった。うーん・・と思ってたら来たよビヨヨーンというシンセベースな感じが。Hyper-Ballad。おお、この曲ならCD持ってるぞ。花火もどかんとあがって綺麗だ。気付けば雨もやんでいるじゃないか。自然の力も、エレクトロニクスの力も取り込んでビョークの声が、星も見えない夜空に響く。とりあえず皆さん満足でしょう。

 その後、信じがたい程の長い行列を待ってバスに乗り、宿に帰って熱すぎる温泉につかる。「燃焼系アミノ式」を飲んでふとんに入ると、程なく眠りに落ちた。暖かいって素晴らしい。

2002.07.27 ------> Hunted by a freak

 明けて27日、日曜日。晴れた。地面はぬかるんでいたけど、午前中は陽射しも強く、少しだけ日焼けした。グリーンでJUDE見つつ日焼け。浅井健一という人は時々グッと突き刺さるいい詩を書くなあと思う。全然見るつもりなかったんだけど、かっこ良かった。右の写真はホワイトステージ横の「ところ天国」とか言う河原。今回のフジで唯一ブチ切れたのがここにあった店の店員のふざけた態度に対してだった。余りにダラダラと注文をさばくし、ド素人丸出しで料理とか作ってるもんだから、とにかく遅い。おいてめえさっさとしろよまってんだよ、と基本的に温厚でジェントルな僕もキレたのであった。スタッフもボランティアもアーティストも、それなりに意識を高く持ってこの祭りに参加してるはずなのに、こういうプロ意識の欠片もないクズな店には本当に腹がたった。だっせえテクノかけてやがるし。いい店はいいんだけどなあ。(ちなみにこの店で僕が注文したのは「フルーツところ天」である。)

 オレンジコートで三上寛+のなか悟空。凄い迫力だった。真っ昼間から濃度100%。ドラムとギターと詩と歌であり、叫びであり、ささやきであり、自問であり、爆発であり、まあとにかく凄い。「夢は夜ひらく」をやって、「私も30年前はこの歌でウタダのお母さんとタイマンはったもんです・・」。意味分かってなさそうなガキたちも引き込まれていたな。

 すぐ隣のフィールドオブヘブンに移動して、最も楽しみにしていた遠藤賢司&カレーライス。これがもう本当に最高だった。高速カッティングと狂ったハープで「夜汽車のブルース」からスタート。「今日はイギーポップには負けない!と思ってやってきました」と挨拶。カレーライス(元くるりのドラムの人とフラカンのベースとギターの人)の演奏も非常にタイトで良くて、オヤジの爆裂に油を注ぐ感じ。「東京ワッショイ」で大爆発。気付くと中学生くらいの子供が隣で飛び跳ねてた。日本サッカーへの愛を語った後に「史上最長寿のロックンローラー」「不滅の男」と続いたラストは圧巻、涙なくして見られなかった。どうすればこんなタチの悪いジジイになれるのだろうか。

 ホワイトステージに移動してYO LA TENGO。これが最高に緩くて、たったまま数度意識が遠のくぐらい眠くなったりした。これ、YO LA TENGOの音楽に対してはホントに悪意のない誉め言葉である。でも今までのライブは時折ノイズぶちかましの曲を入れたりして、なんとかテンションをキープしてたんだけど、今回のステージはSUN RAのホーン隊がゲストにきたせいで、もう完璧に弛緩モード。フリージャズなYO LAというのは実に気持ちが良かった。暴れたかった人は残念だっただろうけど、いいの、俺は楽しかったの。

 日も暮れ始めたグリーンステージに戻ってくると、STEVE WINWOODが少なめの客の前で素晴らしい演奏をしていた。ホワイトでくるり、ヘブンでG.LOVEという若者向けをやってたせいもあるんだろうけど、いやあ、さすがオヤジ向けの最終日。最後はやっぱり力業で持っていって、昨日と違って人も少なめの会場のあちこちから拍手。いいねえ。

 で、一応ヘッドライナーのコステロ。マッシブより先にやるあたり、オヤジDAYとしては非常に正しい。思っていたより太ってなくて、昔の曲もそれなりにやってくれたので嬉しかった。(というか僕はコステロのアルバムで持っているのが"MY AIM IS TRUE","THIS YEAR'S MODEL","GET HAPPY","ARMED FORCES"までで、最近のは全く知らんのだ)コアなファンも少なかったみたい(後ろで聴いてた?)で"RADIO RADIO"とか"LESS THAN ZERO"やっても反応薄め。アンコールでは"PUMP IT UP"、これで終わりかな?と思ったら最後にやってくれたよ、"(What's So Funny 'Bout)Peace, Love And Understanding?"を。コステロの中で一番好きな曲だけど、もう今のステージじゃやんないのかもな、と思っていたら始まったもんだから感激で思わず涙。びっくりするくらいいい歌なんだよな。ピースでラブでアンダスタンディングな気分になり、そして孤独もまた同じぐらいに感じる曲。(そしてあまねく総ての眼鏡のロックンローラーはジョン・レノンとエルヴィス・コステロに感謝すべきだ。)

 mogwaiを見る為にホワイトに移動しようとしたあたりで、マッシブアタックが始まった。スクリーンに日本語での字幕がかっこいい。このあとは「大量破壊兵器はどこに?」とかストレートすぎるメッセージをガンガン流したらしい。3月の来日の時はイラク戦争に対する黙祷からライブを始めたらしいし、言ってることも明瞭でいいと思う。どうして日本のミュージシャンはそうゆうことについての発言する人が少ないのかね?と今の邦楽人気をいぶかしく思ってしまう。

 幻想的な灯りに導かれホワイトへの道を抜ける。ライブ前にアヴァロンで最後の飯。タイカレー。そして始まるモグワイ。

 シンプルなギターのリフ(またはかき鳴らされるフィードバックノイズ)。ドラム、ベース、キーボード、エフェクトがかかり過ぎて楽器として使われる声。歌は皆無。そして演奏の強と弱、静と動、剛と柔、光と影。ステージの上にいるのは5人だけ、無数のミラーボールとそれが織り成す光の洪水。フラッシュ、暗転、ホワイトライト。本当にこれだけで、この日のホワイトステージの最後は、信じられないくらいに美しい空間になった。今でもはっきり思い出すことができる。ノイズの嵐が吹き荒れる直前の静寂を。数千人が息をひそめて、咳払い一つせずに、「その瞬間」を待つ光景を。そしてステージを中心に光と音が洪水になって押し寄せてきたとき、悲鳴とも歓声ともつかない叫びをあげる人たちを。おおげさではなく、本当に美しいステージだった。モグワイで泣くなんて有り得ないと思ってた。だってインストバンドだよ、と思ってた。しかしその音の前には無力だった。どんなにシンプルな構造でも、魂込めて丁寧に一つ一つの音を鳴らして行けば、本当に人の心に届く音楽になるんだということが感動的だった。呆然とする僕ら。立ち尽くす観客に手をふって、グラスゴーのにいちゃん達は淡々とステージを後にした。サンキュー。

2002.07.28 ------> (What's So Funny 'Bout)Peace, Love And Understanding?

 会場ゲートを抜ける。この風景ももう5年目。この日は土曜日に比べれば人が帰る時間も上手く分散したみたいで、バスは待ち時間ゼロ。快適だった。

 翌日、午前中の新幹線で東京へ戻る。僕以外の連れは皆そのまま仕事。僕は家に帰って泥だらけのレジャーシートを洗って干した。リストバンドを外した。泥だらけの服を洗濯した。僕の行った二日間はラッキーなことに、長時間雨に降られることはなかった。でももし雨が降って、ひどい体験をしたとしてもまた来年も行こう、なんて思うんだろうな。全く馬鹿げたことに。

 (以下蛇足)ロックフェスってのはさあ、(と知ったような顔をして言わせて貰えば)これはもう矛盾の固まりに他ならない。フジロックフェスティバルも勿論例外ではなく、矛盾の固まりである。世界一クリーンなフェス。なぜならゴミの分別がしっかりしててマナーを守る客が多いから。だけどそもそも環境を守りたいならフェスなんかやらないのが一番だろ。反戦を叫ぶアーティストたち、ピースサインで応える僕ら。だけどフジロックの協賛企業の中には軍需産業と薄からぬ縁のある大企業も含まれているし、でもそんな企業のスポンサードがなければあれだけの規模のイベントを毎年開催することなんて無理だよね。そしてそもそも「ロック」なんてものは世界の20%かそれ以下の、どちらかと言えば搾取する側で、豊かでそれなりにラクチンな生活を謳歌してる腑抜けた白人と白人になりたいような人たちの為の音楽で、端的に言えばガキの戯れ言だ。

 だけど僕らは、その戯れ言やインチキや矛盾や欺瞞の中から、何か崇高なものを感じ取ろうとしている。いや、そうじゃなくて戯れ言やインチキや矛盾や欺瞞を、そのまま裏返しにして「本当の何か」にしたいと思っているのかもしれない。(そんなことは何一つ考えない人もいるだろうけど。)飽きもせず音楽の中に身を投じ、歩けなくなるほど疲れ、宿やチケットの予約に奔走し、やっぱり基本的にロックの人は馬鹿だ。祭り好きの人も馬鹿だ。

 だけど多分、その馬鹿のひとりである僕は知っている。とりあえず踊ってみることが大切だということを。矛盾があるから何もしない、という人は何も変えられないということを。そしてオヤジっぽくなってきたことに焦燥感ばかり感じるのはやめよう。エンケンを見ろ、最高だったじゃないか。物事は徐々にしか変わらない。そして変わらないものはない。そんな風に勇気を貰いつつ、30代として迎えた初めてのフジロックが終わった。なんか一生ロックがどーとか言ってるような気がしてきたな。そしてそれで別にオッケーな気がして来たよ。根拠は全然ないけど。