潜水服は蝶の夢を見る
シネマライズで「潜水服は蝶の夢を見る」。
「涙きらめく、愛の感動作」などというコピーにはまず拒否反応の人も、これは騙されたと思って見た方がいい。涙きらめく暇もない、がそれでも感動作ではある。
あと、「ELLE編集長で人生を謳歌していた男が、ある日難病の閉込め(ロックトイン・シンドローム)症候群になってしまい、左目以外全ての身体的自由を全て奪われた状態になってしまう・・・」という物語性すら実はどうでもいいのかもしれない。そのくらいこの映画はある1点のみに全てを賭けた映画であり、それは見事に成功している。
つまりそれは「見ること聴くことは出来るのに、まったく動けず、話せないというのはどういう体験か」を映画を見るもの全てに徹底的に経験させること、である。冒頭から主観映像が延々と10分以上はたっぷり続く。圧倒的なワンシーンワンカットで驚愕の疑似体験をさせた「トゥモロー・ワールド」ほどではないかもしれないが、この映画における主観映像の連続は、見ていて息苦しいほどである。(ゲームとかAV以外でこれだけ主観映像だらけの作品はないのでは。)
そしてそんな状態を「潜水服」と彼は名付ける。そしてそれでも「僕には記憶と想像力がある」と。そして「左目の瞬き」だけで会話を始める。会話は頻出順に読み上げられるアルファベットに対して、該当の文字のところで瞬きすることで進められる。(※1)それを20万回以上くりかえして本を書いたから、この映画は作られた。見るものを徹底的に「体験」させたあと「想像」へと導く構成は実に見事。
これは限りなく死に近い場所からのテキストである。限りない絶望の中でも、人は思う。人は言葉を綴る。いや、何かを思い、言葉を綴ることさえ出来れば、生きていける(※2)のである。そしてそんな時、彼の言葉を世界へと繋ぐ媒介者(この映画の場合は医者やセリーヌやクロードの存在(※3))は、例えようも無く美しいものとして認識されるだろう。Velvet Undergroundの"pale blue eyes"が流れるシーンは素晴らしかった。
※1 もうすぐPCと、目の動きに反応するカーソルポイントと瞬き=クリックと認識するデバイスでもっと効率よくテキストが打てるようになるだろう。
※2 奥山貴宏の日記を思い出した。
※3 みんなとても可愛くてなんだか笑ってしまう。ジャン・ドー都合良過ぎって。
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