ノーカントリー
今年のアカデミー作品賞、コーエン兄弟のノーカントリー。
コーエン兄弟は藤子不二雄みたいなもんで、藤子・F・不二雄(未来は今、ビッグ・リボウスキ、オー・ブラザーみたいなコメディ系)と藤子 不二雄A(ブラッド・シンプル、ファーゴ、ミラーズ・クロッシングのようなシリアス、スリラー系)の2系統があって、どっちかがジョエルでどっちがイーサンなんじゃないかと勝手に思っている。まあ勝手な憶測ですが。
そしてこの「ノーカントリー」は完全に後者。コメディ風味は少なく、音楽もほとんどなく、ひたすらに緊張感が続く。こんなに集中して見る映画もないだろうというぐらい集中した。追跡劇に徹していて、そこはとっても面白い。ただし、この映画は通常の追跡劇的な終結を断固として拒否する。終わった後に、頭の中で生まれる「?」の数々。カタルシスはゼロ、涙もゼロ、共感もゼロ、喜びも怒りも哀しみも笑いもない。あるのは恐怖・おかっぱのオッサンの悪夢と、トミー・リー・ジョーンズの困ったような表情だけだ。
正直、見終わった直後はなんでこんなに評判いいのかよくわからなかったし、ファーゴの方が良かったんじゃないかとも思ったが、じわじわと悪夢のように心を浸食しているのか、明け方頃に突然目が覚めて、「ああ、あのシーンはそういう意味だったのか・・」と気付いたりして、なんとも厄介な映画のようである。そしてこの、すっきりしない感じ、わからない感じ、もやもやした感じ、見た人に勝手に解釈させる感じこそが、この映画の狙いなのは確かで、わかりやすい答えなど与えてくれる気配がない。
(以下は映画を見た人だけ)
シガーは死神であり、神でもあり、ロボットでもある。人間は感情の奴隷だが、シガーはそのことが不思議でならない。なぜコインの表と裏に人生を賭けるように生きられない?なぜ運命に従順にならない?お前は自由意志で生きると思っているようだが、それは違うのだよ、ということを彼は教えようとしているだけなのだろう。つーか、追っかけられるから人間は逃げるのだ。それ以上の理屈などないのだ。
モスが考えた作戦はいったいどんなのだったのか?が結局のところわからない。まあ誰もわからないからいいんだけど。
ラスト近く、なぜモーテルでシガーはベル保安官を殺さなかったのか?シガーは金を見つけることが出来なかった。ベルを殺す理由はない。なによりも顔を見られなかったから。ベル保安官も結局金を見つけることは出来なかった。
「ノーカントリー」の結末の夢の意味。
No Country for Old Menはイエーツの詩の冒頭部分だそうだ。へえ。
というわけで、一晩寝かせてみると、自分の中での評価がぐんぐん高まって来た。普通に面白かったのに、あえてあのラストに持っていくあたりの気持ち悪さも含め、なかなかに仕掛けの多い作品。
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