cinema: 2007年10月アーカイブ
日曜日。新宿のバルト9でキングダム/見えざる敵。
バルト9には初めて行ったけど、見やすい傾斜のついた座席、インターネットでの指定予約など最近のシネコンらしく機能的。恵比寿ガーデンシネマとかシネ・アミューズとかもいい加減に近代化して欲しいものだ。
映画について。社会派であり、かつ娯楽作である映画というのはこうやって作るんだと言うお手本のような素晴らしい出来(若干の誇張やご都合主義は目を瞑るとして)だった。冒頭に怒濤のCGとナレーションでサウジアラビアの建国から911までが綴られる。そして世界最大の石油産油国と世界最大の石油消費国、サウジとアメリカの関係が、テロリストとそれを追うFBI、そしてFBIとサウジアラビア警察の友情にダブらせて描かれる。物語は全くダレないテンポで展開し、お約束的なド派手アクションも銃撃戦も含めつつ、なんとも言えない重い印象を残すラストまで続く。これで110分。お見事、という他ない。
ジェイミー・フォックスはすげえわと唸らせる演技。サウジ警察の大佐と巡査はパラダイス・ナウに出てた人でした。音楽は特に静かな余韻が残るギターがとってもいい感じで、単なるドンパチアクションにならないような効果を上げてたような気がする。
あと、途中でこれ何かの映画に似てるな?と思ったのが、リドリー・スコットの「ブラックレイン」でした。サウジが大阪の街で、FBIがマイケル・ダグラスでテロリストが松田優作、そしてサウジ警察の大佐が高倉健。異国の地で、その文化の差に戸惑いながらも、友情を育むってのは感動の王道なのかもしれない。ウルルン滞在記メソッドとでも言おうか。あ、「ラストサムライ」も似てるな。。
飲み過ぎてちょっと反省気味の朝。Amazonからの出荷が遅れに遅れて、やっとこさiPod Touchが到着するのを待ちながら、適当に最近見た映画のメモなどを。
「アンブレイカブル」。DVDがウチにあったので見た。(ウチには未見のDVDが沢山転がっているのである。)宇多田ヒカルが好きな映画らしい。シャマラン監督というのはホント不思議な人だ。映画という枯れきったフォーマットを「蘇らせる」とか、「再構築する」のではなくて、素直にもう1回なぞっている感じ。だけどなぜか正統な映画でない不気味なモノが映画を支配していて、ついつい見てしまう。サミュエル・L・ジャクソンが圧倒的にヘンなのだが、他にも表現しにくいヘンさが沢山ある。ただ、もしかすると今までに見たシャマラン映画の中で一番良かったかもしれない・・・あ、いろんな意味でスゴいと噂の「サイン」未見だわ。
これも転がってたDVD。どうして評判がいいのか理解出来ない。チャーリー・カウフマン脚本は「マルコヴィッチの穴」と「アダプテーション」を見たがいづれもつまらなく、この「エターナルサンシャイン」もやっぱり合わなかった。明らかに相性が悪いのだろう。はじまってから10分もたたないウチにオチが分かってしまうのに、延々と1時間半センチメンタルなプロモーションビデオみたいな映像を見せられる。(それなりにいいお話なんだけどね)最後に何か裏切りがあるのかと思ったらそのまま終了で、これなら60分のピンク映画にしてもオツリが来るだろう、と思わせる脚本の薄さ。そして結局のところ、SF的設定の使い方が気に入らないということに尽きるのかもしれない。ケイト・ウィンスレットとジム・キャリーはいい。
テレビで見た。ビリー・ボブ・ソーントンが大真面目に演技している。その他の出演者もみんな(除くブシェーミ)大真面目で、地球の危機に立ち向かっている。その昔「ガキの使い」で浜ちゃんがこの映画の内容をイラスト付き紙芝居を紹介していたのを思い出した。あの紹介通りの映画である。
紙芝居、こちらにあったのを発見。
ダウンタウン/浜田画伯 - PukiWiki
日曜日。なんとなく前日から貴族気分なのでル・シネマでヴィスコンティの「山猫」。(リンク先は2004年にテアトルタイムズスクエアで公開したときのページ。)
途中何度か睡魔に襲われて落ちたけど、最後の方はもう大感激。3時間の壮大な「映画」は、全てが全て本気でびっくりする。舞踏会のシーンは映画史に残ると言われているそうだけど、確かに凄いわ。たっぷり1時間はパーティやってるだけの映画なんて他にあるだろうか?他にもアンジェリカとタンクレディが廃屋をウロウロしたり、サリーナ公爵がウサギ狩りしながらブツブツ話したり、とにかく3時間もの映画の時間はひたすらに「浪費」される。それが見事なまでに没落してゆく貴族の儚さとマッチしていて、とても美しく感じてしまうのだ。
フィルムの長さに比して物語性は希薄で、イタリアの近代化が押し寄せる時代と、少々の恋物語があるだけだ。激動する社会の中で、何をするでもなくただ過ぎていく日々と時間。去り行く年寄りにとってはそれだけのことだが、そんな世の中をギラギラとした目で生き延びていこうとする若者。この対比がこの映画の主題なのだろうが、美しいラストシーンを見終わった時に残るのは、若者の野心ではなく、年寄りサイドの哀惜に満ちた思いの方だった。「忘れ去られたいのだ・・・」とつぶやく公爵にしびれる。
恵比寿ガーデンシネマでパンズ・ラビリンス。
かわいらしいファンタジー映画と思って見に行くと痛い目に合う映画。カエルはぶよぶよのゲロゲロだし、妖精は首がぐちょっーんだし、容赦ない弾丸や拷問や縫合に気分が悪くなるかもしれない。ファンタジーとはおぞましく、不愉快で、残酷なものでもある・・とう前提がない人が見るとショックかもしれない。そんな残酷さの中で、現実/妄想、親/モンスター、不幸/幸福・・・様々な対になる関係が、映し鏡のように互いを無限に増殖させていって、まさに迷宮のようになっていくイメージが素晴らしい。
監督が大好きだというジブリのアニメとの類似点をあげると、少女の異世界漂流譚としては「千と千尋」だし、酷薄な現実と少女(少年)という意味では「火垂るの墓」だ。ピーター・ジャクソンの「乙女の祈り」もちょっと入っている。
ファンタジーとは、現実の一つの「語り方」である。この映画は人々の人生を「語り方」で救済しようとする無謀な試みであり、その無謀さゆえに僕はこの映画のラストシーンで泣くことが出来る。なんとまあ優しい物語であろうか。
ゴダールのSF作品。とりあえずSFだが、びっくりするほど簡素な設定、びっくりするほど普通の街、人々、なぜかそれを「アルファヴィル」というコンピューターが君臨する未来の街として有無を言わさず断言してしまうことで、あっという間に不思議な世界が展開されていく。観客はある時は笑いながら、ある時はアンナ・カリーナの瞳に吸い込まれそうになりながら、この星を冒険する。
いちおう「機械」と「人間性」の対立軸みたいなものが中心に据えられているんだけど、そんなことよりも奇妙なプールの処刑風景とか、あり得ないほど適当なコンピューター描写とか、壁に張り付いて悶絶する人々の演技とか、チープすぎるカーチェイスとか銃撃戦とか、セクシーな第3級娼婦に笑ったり、それら全てを含めて素晴らしい異世界の体験だった。
アンドロイド的美貌への憧憬と、悪夢的管理社会という要素は非常にディック的。そしておそらくは僕が今まで見てきた沢山のSF映画たちにも大きな影響を与えた作品。これを見ずにSF映画をあんまし語っちゃダメだったかも、と今更ながら思ったりした。
※攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 第03話 「ささやかな反乱 ANDROID AND I」には、この映画および「勝手にしやがれ」が引用されている。最近「攻殻機動隊」をDVDで見ているところなので、非常にいいタイミングでの上映だった。
これも土曜日に見た映画。渋谷シネマ・アンジェリカでアンナ・カリーナ週間。ゴダールの「はなればなれに」。
今更ゴダールかよと言われても仕方ないが、完全にやられた。もしも完璧な映画というものがあるとすれば、これはその完璧な映画の下書きとかデモテープのようなもので、どこを切り取ってもわくわくするようなアイデアや楽しさに満ちている。そして、完成しきっていない感じがするところがまた愛おしい。アンナ・カリーナは反則気味にかわいくて、音楽は微妙にヘンで、物語はそもそも何のために必要なのかよくわからない。(強いて言うなら、男二人と女の子に映画の中で動き回ってもらう為に必要なのだ。)だけど、この数日間の物語は、なぜか美しい均衡を持っているように思える。
この映画を見たのは2001年の日本初公開の時以来2回目だという我が妻が言うことには「欠点があるとすればアルチュールがイマイチかっこよくないこと」だそうだが、男から言わせるとそれがまたいいところなんである。まあどうでもいい話ですが。
で、今日は「アルファヴィル」を見に行ったのだけど、その感想はまた後日。
マイケル・ムーアのシッコ SiCKOを遅ればせながら見た。先週の土曜日に渋谷で。
マイケル・ムーアの最高傑作というのもウソじゃないかもしれない。特に日本では、今まさにアメリカ型医療保障へ突き進もうとしている真っ最中のように見えるから、「人ごとではない」感がひしひしと伝わってくる。(大病した父親のこととか、喘息持ちの僕自身のこととか、映画を見ながらずーっと考えていた)
あと単純に、社会保障制度が充実していることは、トータルで考えると「社会(=みんな)」が負担するコストを下げることにも繋がるということを、少なくとも日本の多くの人はなんとなく体感として分かっているはず・・と思うのだけど、それは甘すぎる考えなのかもしれない。"I"ではなく"we"という単位で考えた方がいいことも沢山ある(=人類の知恵)はずなのに、全力で「"we"で考えること=恐怖の共産主義的思考」と教え込まれちゃったのかもね。なんともやりきれないことだが。
何回か映画の途中で泣いて、エンドロールで元気が出た。ありがとうカート・ヴォネガットとか、行動を起こそう!(Do Something)とか。(あとカナダ人を釣ろう.comにもね。)

