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FOOTBALL OR DIE No.36 |
| This is POP! |
| 文/ビワコビッチ(1999.8.12) |
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Jリーグディヴィジョン1の後期が始まった。ここのところ、完全にJ2、JFLの観戦者になっていた僕にとっては、史上最も思うところのない開幕だった。どこが優勝しようが特に構わない。優勝してほしくないチーム(つまりは嫌いなチーム)はあるが、そこが優勝したからといって悲しみにくれる訳ではない。僕が明確に望んでいる結果は、J1リーグにおいては存在しないのだ。あえて言うならば、J2に降格する下位2チームに僕が好意を抱いているチームが入らないことを望むだけだ。ただそのことを熱烈に心配するほど、僕はそのチームに入れ込んでいない。ディヴィジョン1の後期にかける思いは「その程度」である。 そんな僕でも開幕戦の「横浜vs磐田」のテレビ中継は見た。3-0で横浜マリノスが勝利した試合である。(余談だが、僕は余程の脅迫を受けない限りFマリノスという呼称は使用しない。)随分と珍しい全国ネットの生中継で、視聴率は4.9%だったそうだ。その裏では野球の巨人戦があって、13%だったことから「視聴率をとるソフトとしてのJリーグ」に関する議論がサッカー掲示板などでは再燃した。ゴールデンタイムの視聴率としては惨敗であろうこの数字をめぐり、悲観論や楽観論が交差した。インターネットの掲示板には底知れぬ力があるように思う。サッカーの開幕戦の視聴率から始まって、立派なメディア論に収斂していく議論の深化があり、一般の消費者/コアな消費者に関する興味深い論考があったりする。掲示板という特性上優れた投稿者は簡潔な表現を用いるので、文章の巧拙が分かりやすく名文も日々生まれている。だから雑誌に掲載されているような文章より、余程優れた投稿に出会えることも珍しいことではないのだ。(勿論それと同数かそれ以上の、優れていない文章も読まなければならない訳だが。)そうやって僕は多様な意見に遭遇した。「横浜vs磐田」のゲーム自体には僕を熱狂させる何かは無かったが、それにまつわる「何か」は、確実に僕の中に問題意識として残ったのだ。 つまりはサッカーの持つ熱についての話である。フットボールは「ポップ」なのだ、という言い方をしてもいいかもしれない。勿論サッカーはプロリーグだけではない。無数の草サッカープレイヤーがいて、下部リーグ所属のアマチュア/セミプロ選手がいて、頂点にプロリーグがあり数多くのサポーターが存在している。そういったサッカーの構造を考えるなら「ポップ」こそがサッカーの本質であるという言い方は難しくなってしまう。誰か他人の熱狂を背負わなくてもサッカーはプレイされ得る。そこには視聴率や観客動員数などと無縁な世界が広がっている。それでいいではないか、という声も理解できる。しかしやはり僕には、そういったサッカーと地続きの世界として途方もなく「ポップ」なサッカーが存在して欲しいという思いがあるのだ。たった22人の人間と一つのボールの動きに何万もの人が現場で、何百万もの人が電波を介して熱狂する場としてのサッカーは、あらゆるその他のサッカーを集約する場として必要だと思うのだ。 開幕戦の横浜国際競技場は、実に42000人もの観客を集めていた。ちょっとJリーグの観客動員数に興味のある人ならすぐにクサイと感じるだろう。少し多すぎるのだ。この日は2002年W杯の決勝戦会場が横浜に決定した日で、多くの招待券がバラまかれていたという(自分で確認したわけではないが)。そうやって大量のタダ券を配ることが、何かの役に立つという判断を下す人がいるから行われているのだろうが僕はそうやって観客を水増しすることに意味があるとは思えない。化粧品の無料お試しセットのようなものだと思っているのだろうか?正規の料金を払って観戦する人をバカにした行為だとは思わないのだろうか?僕にはそうやって水増しで作られた大観衆よりも、三ツ沢で6000人以上の純粋有料入場者を集める横浜FCの未来の方に肩入れしてしまう。 つまり横浜市や横浜マリノスは間違った道を選択しているのだ。W杯の決勝戦という、現在考えうる地球上のイベントの中で最大級のモノを開催する街は、目先の「ポップ」を求めてタダ券をバラまき、空虚な熱狂を捏造すべきではない。そのような前例を作るべきではない。もし捏造された熱狂の中で決勝戦が行われ、スタジアムを所謂「タダ券で見に来たブタ」どもが占拠するような光景を見てしまったら、僕は深く深く悲しむことだろうと思う。決勝戦はその「決勝戦は価値あるものである」という前提によってより価値が急騰し(チャートの1位にランクインすることでそのCDを買う低能な人がいることにも似ている。)、結果として招待券を得られる立場の人間がその場を埋めるのだ。(それならくだらないと思うしワールドカップなどまだ日本では開催するべきではないとも思う) そして僕が考える「ポップ」は今言ったような空虚な熱狂とは無縁のものである。J1リーグには本物の熱狂を生みだすポテンシャルがあると思っているから、わざわざこんなことを書いている。まず目指すべきポップは決して全国中継がされて視聴率20%を超え、7万人の会場が満員になるものではない。ローカル中継がそれぞれの地域で放送されそれなりの視聴率をとり、2万人クラスの各試合会場が満員になるような状況を作り出すのが先なのだ。 そんな僕の偏執狂的な思いを抱えて今年の、この国のサッカーは残り半分を走り始めた。この夏は本当に暑くて、難しいことをなるべく考えたくないと思う。そんなことを考えず熱狂することが大事なのだとも思うし、理屈っぽい言葉を軽々と超えてしまうから僕はこのスポーツに拘っているのかもしれない。
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