FOOTBALL OR DIE
No.38
 1999年、9月の8分の5
文/ビワコビッチ(1999.9.14)

 9月5日(日曜日)から翌週の9月12日まで、8日間で5つのゲームを観戦した。選手であればどんなタフな選手でも音をあげる日程だろうが、幸か不幸か僕はゲームを眺める立場である。多少の金銭的事情を考えなければ、単純に楽しむことが出来る。時間を都合出来る立場にいる幸せを感じながら(無職の日々ももうすぐ終わるけど)とにかくサッカーを追いかけた。


 9/5 西が丘サッカー場 FC東京 vs 川崎フロンターレ

 Jリーグディヴィジョン2の首位決戦である。しかし首位を争うことは大きな意味を持たない。上位2チームが昇格出来る、という条件なのだから、現在の上位2チーム(川崎、東京)が本当に戦うべき相手は3位以下のチームなのだ。しかし試合は0-0で引分となり双方が勝ち点1を得る(勝利の勝ち点からは2を失う)という結果になった。つまり3位以下のチームとしては追いかけやすい結果になった訳だ(川崎が勝って独走し、2位を狙うという考え方もあるが)。札幌もきっちり勝利して東京との勝ち点差を縮めてきた。
 西が丘サッカー場は4800人程の入り。これだけ入れば9割は埋まったという感じになってしまう。そして東京には残念な引分だったが、チャンスを多く作り、楽しませてくれる試合だった。


 9/7 国立競技場 U22日本代表 vs U22韓国代表

 結果は4-1で日本代表の勝利。こんな大差で韓国に勝利する日本は見たことがない。結果だけでなく、個々の選手の能力でも圧倒的に上回っていると感じた。特に中田、稲本、遠藤という中盤の3人はそれぞれの個性が上手く機能していて非常に力強さを感じる。それにしても彼らは巧い。ボールを止める、蹴るという基本は当然のこと、次に何をするかという判断のスピードが素晴らしい。
 韓国はモダンなチームにしようと努力中といった感じ。守備はゾーンで守ってくるし、ドリブルで突っ掛ければとりあえずのチャンスになるシーンでもパスを繋ごうとしたりする。ラフなプレイも少ない。つまり体力まかせのサッカーからの脱却を目指そうとしている。しかししばらくの間は日本の技術的優位は動かないだろうと思う。


 9/8 横浜総合国際競技場 日本代表 vs イラン代表

 前日の試合とはうってかわって、ストレスの残る内容。1-1の引分。しかしモチベーションの余りない中、両チームの選手はよくやったと思う。イラン代表はU22韓国代表の数倍は強いチームだったから、この2試合で「オランピック代表とフル代表のどちらが強いか?」という設問に答えは出せない。そして大量のイラン人サポーターが試合をダレさせなかったのは確かだ。これからも親善試合の相手としてはいいチームなのではないだろうか。
 しかし中盤で優位に立ちながら、イランが決定的なチャンスを作れなかったのは日本のDFの頑張りによるところが大きい。中澤、森岡はとても頑張っていた。


 9/10 等々力陸上競技場 川崎フロンターレ vs コンサドーレ札幌

 この5試合の中でのベストゲーム。「みんなでJ1、一万人大作戦」ということで川崎は大量の観客を集めた。J2の試合では札幌以外はまずお目にかかれない1万人突破をやってのけた。最終的には13000人を超えていた。富士通関連社員の動員も多かったし、札幌サポーターもとても多かった(声では川崎を圧倒していた)。僕のようにどちらの応援でもなくぶらっと来た人もいただろう。しかしそんな人全てにアピールするナイスゲームだった。川崎はこれだけの人数を集めてしまった手前負けられない、札幌は昇格の為にはこれ以上勝ち点を離されたくない。双方の「負けられない」がぶつかり合って、緊張感のある好ゲームになった。川崎がオフサイドをギリギリくぐり抜けて先取点を得た後は、札幌サイドのスタンドはまるで祈るような雰囲気に包まれていた。しかしFWを入れれば攻撃的になるという訳でもないのに、岡田監督は代表監督当時と同じくFW追加で追い付こうとしていた。結局川崎に上手く人数をかけて守られて、ロスタイムに逆襲で失点という最悪のシナリオ。しかし札幌の最後まで諦めないサポートは感動的だったし、まだ残り11試合もある状況で昇格「絶望」を口にするのは早い。川崎も東京にもこける可能性は残っている。もちろん僕は川崎がこければいいと思っているのだが。


 9/12 大和スポーツセンター 横浜FC vs 横浜Fマリノスユース

 天皇杯の神奈川県代表を決める試合。県内のアマチュアチームを破って勝ち進んできたFマリノスユースと、JFL所属の横浜FCの「横浜ダービー」となった。朝の10時という、プロリーグに慣れたものには厳しい試合開始時間にも関らず、会場の大和スポーツセンターは1600人もの観客が訪れた。ほとんどが横浜FCのサポーターである。結果は3-1で横浜FCが勝利し天皇杯の出場を決めた。マリノスユースの子達はみんな素晴らしく上手い。最近のユース世代の巧さは本物である。長年プロでやってきた横浜FCの選手達に個人では負けていない。しかし微妙な経験の差が勝負どころでのボールの動きを決する。茨城では水戸ホーリーホック(JFL所属)が鹿島アントラーズユースに5-0で勝利した。つまりそういうことなのだ。3部リーグの選手だからといって「下手糞ーっ!」と罵声を浴びせていたマリノスサポーターも理解したことだろう。サッカーにおいて個人戦術の占める割合がいかに大きいかを。
 願わくば、天皇杯の本選で横浜FCが勝ち進んで、ユースでない横浜マリノス(こちらがコケることも心配だが)と対戦出来ますように。本物の横浜ダービーを見てみたい。まだ早すぎるかもしれないがそのシーンを夢想してしまう。


 一週間でこれだけの試合を見るなんて尋常ではない(今までの僕の感覚からすれば)。富士通に動員されて等々力に来ていたネクタイを締めたおじさんには理解出来ない生活だろう。しかし彼らだっていつか理解するときが来るかもしれない。それだけの理由があるのだと。あの試合はいい試合だった。勝ったほうは本当に嬉しかったし、負けたほうは世界の終わりのような気分だった。僕は札幌サポーターの打ちひしがれた姿に泣きそうになった。しかしそれはいつも未来に繋がっている。(別に7月で世界は終わったりしなかった。)またこんな一週間を過ごしてみたいと思う。





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