FOOTBALL OR DIE
No.39
 楽しいことばかりじゃないさ
文/ビワコビッチ(1999.11.1)

 前にfootball or dieを書いたのが、9月の半ばだったから1ケ月半近くも間が空いたことになる。このコラムを始めてからおそらく最も長いインターバルだった。その間僕は全くサッカーに興味を失っていたのかと言うとそんなことは全然なくて、むしろより熱心にスタジアムに足を運んでいた。ただ、10月から就職した僕にとって、時間はある程度意識しなくては作り出せないものになってしまっていて、じっくり原稿を書くことが難しい日々だったのだ。

 一人の人間にだって、そんな風にリズムが悪くなってしまうときがある。別に気持ちは何一つ変わっていないはずなのに、周りの状況や自分の体調などに影響されて、全てが裏目に出てしまう時期があったりする。肝心なことは、いかにそんな悪いサイクルに入り込まないようにするか、ではなくて、いかにしてそのサイクルから抜け出すか、である。なんだか説教クサイ言い方ではあるが。

 だから、この1ケ月のFC東京の戦い振りに対して僕は過度に悲観的になったりはしなかった。ある程度サッカーを見てきた経験からリーグ戦というものの戦い方は知っているつもりだし、取り乱してもいいことは何もないからだ。そして昨日、10月30日、東京は久し振りに勝利した。残る3試合は更なる重圧が待っている。それにしても10月はキツイ1ケ月だった。僕は「会社」に入ってしまった自分の境遇と、連敗を続ける東京の姿を勝手に重ね合わせては、なんとかこの日々を乗りきってきたのだ。

 それにしても感慨深いものがある。僕は元来サッカーにここまで深入りすると思っていなかったのだ。日本代表などに注目している限りは、自分の生活を乱さない程度にのめり込むことが出来るし、スタジアムに足を運ぶのも年に10回もなくて平気だった。しかしFC東京を見始めてからはそれが変わってしまったのだ。「地元」にチームがあるという感覚に襲われてから、周りを見渡してみるとサッカーの試合のなんと多いこと。結局僕は東京のホームゲームの8割以上を見ていることになる。原因は勿論、このセクシーなチームに魅了されてしまったこと。そしてもう一つある。

 そう、去年の今頃、横浜フリューゲルスのマリノスへの吸収が発表された。それはこれからも決して忘れることのない衝撃だろう。僕はそれほど熱心にフリューゲルスの試合を見続けていた訳ではなかったが、そこから始まった一連の事件は間違いなく現在の僕に影響を与えている。僕は横浜FCのソシオだ。そして地元のチームであるFC東京の試合を実に17試合も見に行っている。ソシオの会員権は30000円、FC東京のチケット代は1500円×17=25500円である。細かく計算するつもりはないが、その他の試合や交通費等を含めると、僕は今シーズン10万円近くはサッカーに費やしていることになる。守銭奴で有名なこの僕が、である。なぜサッカーに金をかけることを厭わなくなったのか?勿論それは収入のことだって関係している。学生に比べればある程度のお金は自由に使えるし、僕には扶養家族もいない。しかし決して余っているという訳ではない。4ケ月に及ぶ無職生活であらかたの貯金は底をついてしまった。

 それでもなぜ金を払ってサッカーを見続けるのか?それは去年チームを無くしたからだと思っている。フリューゲルスが消えた主な原因は、根拠のない悪意の存在のせいでも、チームに関る人たち全員の合意のせいでもなく、「金」である。だから僕は思ったのだ。ひどく当たり前のことを。自分たちが楽しむ場を確保したいと思ったら、その為に努力するしかないのだ、と。日産や全日空に「そんなひどいことやめて下さい」とお願いしても何も変わりはしなかった。それなら企業に頼らないでやっていくよう考えるしかない。僕は横浜FCのソシオになったり、積極的に東京の試合を見に行くようになったのは、勿論サッカー本来の魅力のせいもあるのだが、部分的には「金を払ってクラブの運営に協力したい」という思いのせいなのだ。それは誰の為でもない。自分が楽しむ為のささやかな投資である。

 それにしても、Jリーグが始まって7年目にしてようやく僕はクラブチームのリーグ戦の楽しみ方を知ったようだ。それは同時に苦しみを知ることでもある。今年の3月、何気なく訪れた西が丘サッカー場はとても楽しかった。FC東京というチームに出会った。その時はリーグ戦の終盤にこんなに緊迫した展開になるとは予想もしていなかった。というより自分がその緊迫の只中にいるとは思っていなかった。あれから半年以上が過ぎ、僕はすっかりこのチームと苦楽を共にしているような気分になっている。来年は年間チケットを買ってもいいとさえ思っている。ただそれがどの位の値段になるのかは分からない。なにせまだ、来年戦うリーグすら決まっていないのだから。





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