FOOTBALL OR DIE
No.43
 You got the money,I got the soul
文/ビワコビッチ(2000.1.25)

 今日、会社の帰りに銀行に寄った。24000円を東京フットボールクラブ(株)に振り込んだ。そう、FC東京の2000年シーズンの年間チケットの代金である。僕が買う初めての年間チケットである。これで僕はFC東京のソシオになることになった。昨年の11月には、30000円を横浜フリエスポーツクラブに振り込んだ。1999年度に引き続き、僕は横浜FCのソシオでもある(こちらには年間チケット料金は含まれていない)。幸か不幸か、この2チームは違うカテゴリーで戦うので、僕は引き裂かれるような思いをしなくて済む。

 僕はどちらかと言えば金にケチくさい人間で、常にせせこましい計算をしながら生きている。タワレコのポイントもきっちり集めるし、前の会社に勤めていた時は、高い昼飯代を節約するため毎日弁当を作っていたくらいだ。酒もよく飲むが、飲み代の精算時の頭は冷静だ。そんな男が、たかがフットボールを観る為に、54000円も払っているのだ。(厳密にいうなら横浜FCの場合は観戦料金ですらない。「純粋な」ソシオ会費だ。)これは尋常なことではない。ちなみに言うなら、僕の経済状況は昨年、一昨年より明らかに悪化していて、全くお金に余裕がない。しかし、それでも僕は金を出すのだ。フットボールの為に。

 この世の中はとにかく金が必要だ。それはプロサッカーの世界も同様である。ちょうど今は日本的な企業主体のサッカーチームから、本当のプロのクラブへと移行していく時期でもあり、多くのチームが財政的に苦しい状況にある。そして曲がりなりにもプロサッカーのある時代を生きてしまった僕は、その発展と存続を望んでいて、その為に何かをしたいと思ってしまった。その時に出来ることが「金を出す」というシンプルなことだったから払うことにしたのだと思う。僕は衛星放送の設備を持っていない。BSやCSがあれば、多くの試合を観ることが出来て、交通費や飲食代もかからず割安だろう。それでも実際にスタジアムに行くことを選ぶのは、勿論生が一番だという理由も在るが、直接チームに貢献したい、という思いがあるからなのだ。

 そして、厳密に言うならば僕のそんな考え方は少々イビツだ。人が「お金を払う」という経済行為は、純粋な価値の交換であるべきで、支払う対価として対等かそれ以上のものを得られる場合が普通だ。FC東京の年間チケットはかなりのホームゲームを見ないと損になってしまうし、横浜FCに至っては「具体的な見返りゼロ」の代金である。僕は決して「これは買わないと損だぜ」と力強く思って買うことを決めたのではなく、上記のような少々倫理的な思いを持ちつつ買うことにしたのだ。横浜FCの経済的な基盤はかなり脆弱だし、FC東京のバックはそれなりに強力だが、クラブは自立した経営を目指している(と思う)。その為には僕に出来るサポートをしようと思ったのだ。それはバーゲンで洋服を買ったりする人の気持ちからはかなり離れた地点にある。本来はバーゲンに群がる人のように、年間チケットやソシオ会員権が売れるべきなのだ。しかし残念ながら、現在の日本のクラブの多くは、まだ僕のような倫理的な経済的貢献者が多いのが現状だろう。

 しかし、そんな状況は変わっていくと思う。このまま時が過ぎていけば、サッカーに取り憑かれた人が増え、皆がスタジアムに群がるだろう、そんな楽観的な予想をしてしまう。市民クラブは何も横浜FCだけではない。全国各地に新しい形態のクラブが育ち始めている。何年後になるか分からないが、そんなチームが堂々と一部リーグで戦うような時代になったとき、クラブをサポートするのに倫理的な言い訳はいらないだろう(今だってそんな言い訳はないという人もいるだろうが)。純粋な対価としてサッカーを手に入れるのだ。もしかしたら今でも既に僕のような考え方は古くさいのかもしれない。サッカーが純然たる興行的スポーツなら、そもそもこんな話はどうだっていい。マーケティング理論とマスメディアが結託すればいくらでも商品価値は上がるだろう。しかし、サッカーはプロ野球とは違うのだ。それは見る側に常に自発的な参加意識を求め、それによって異様な熱を持ってしまう属性を持つ。その運動は一度転がりだせば止めることは困難だ。そしてもう、その運動は始まってしまったのだ。

 というわけで、僕はそんな時代になったとき、多少周囲に煙たがれようが自慢気に言うことにしたいのだ。自分は横浜FCの初代ソシオだ、FC東京の2年目のソシオだ、と。それはお金で買うことの出来ないものになるはずだ。くだらない自慢かもしれないし、自慢にすらならないかもしれない。まあ、しかし、そんなことから始まっていくのだ。未来に希望を持つというのはいいことだ。





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