FOOTBALL OR DIE
No.54
 Five Years
文/ビワコビッチ(2000.9.14)

 デビッド・ボウイの「Five Years」はこんな風に終わる。

僕たちには5年間しかない 目に焼き付いてはなれない
僕たちには5年間しかない なんていう驚きだ
僕たちには5年間しかない 僕の頭はいかれてる
僕たちには5年間しかない 残されたのはそれだけだ


 今週は電車の中で「サッカー批評」を読んでいた。後藤健生氏が「今まで日本代表の試合を見ていて最も心を揺すぶられたのは?」との問いに「97年ワールドカップ予選、アウェイのウズベキスタン戦」と答えている。そしてその後は延々とホームの韓国戦でのロペス→秋田の交代について語っている。あれからもう3年。9月12日頃はたしかアウェイのUAE戦の頃だと思う。小村が触ってしまってノーゴールになったシーンがあったな。今でもはっきりのあの2カ月間のことは覚えている。なんというかあの時と同じような思いはもう二度とないような気がする。それくらいあの時期は鮮烈な経験だった。全ての試合日程が常に頭の中に入っていた。ほとんどのゴールを思い出すことが出来る。ホームの韓国戦での山口のループシュートの凄さと言ったら・・・。

 それから3年が過ぎた。ワールドカップは3戦全敗で終わった。ワールドユースでは2位になった。オリンピック予選はあまりヒヤヒヤすることなく終わった。そして今、オリンピックの本番を迎えようとしている。当たり前のことだがアトランタオリンピックからは4年経ったのだ。アトランタオリンピックのアジア予選を勝ち抜いた翌日に大学を卒業した僕にとっても、それから4年間が過ぎたことになる。今、当時のキャプテンが在籍していた横浜フリューゲルスというチームはなくなったし、中田はローマの選手だし、川口はオールバックになっている。人生何が起こるか分からない。時の流れは誰にでも平等で、その確かさの前にはどんな傲慢な態度もひれ伏すしかない。

 先日、夜中に何を思ったのかプレステのサッカーゲームをやった。98年のワールドカップバージョンだった。僕は日本チームを選択しワントップに呂比須ワグナーを据えた。左サイドからの小野の低いセンタリングに呂比須がするどく突込み、見事なゴールをアルゼンチン相手に決めた。その瞬間、ゲーム画面の下のテロップが出た。「呂比須ワグナー(28)」と。そう、あの頃の呂比須と僕はいつの間にか同じ年齢になっていたのだ。同い年の名波や岡野は当然その時26で、当たり前のことだが2002年には30歳になる。ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。

 オリンピックは素直に楽しみにしている。メダルメダルと騒ぐマスコミはどうにも煩わしい存在だが、そんなノイズに関係なくこのチームはある程度の期待を抱かせるチームだ。先週の国立でのモロッコ戦を見て僕はそう思った。彼らは堂々とした、自信に満ちた(その根拠の是非はともかく)プレーをする。オリンピックの本番になってもあの態度は変わらないだろうと思う。そして彼ら(の多く)にとってはこのオリンピックは最後のオリンピックなのだ。4年後には彼等はそれだけの歳をとっている。(次のオリンピックのサッカーがどんなレギュレーションになっているかは知らないが、多分年齢規制が今より緩和されることはないだろう。)そういった要素が、つまりもう僕らにはどんなうまくいっても7試合しか残されていないんだ、という意識がよい方に作用すればとてもいい試合が見られるのではないかと思っている。4年前の予選リーグ最終戦、ハンガリー戦はとてもせつない試合だった。チームはバラバラで、終了間際に逆転するという劇的な展開も、内容的にはひどいもんだった。こんな試合でこのチームが解散してしまうのかと思った。それはフランスにおけるジャマイカ戦もそうだった。だから勝とうが負けようが、このチームを見て良かった、というゲームであって欲しいと思う。

 そしてオリンピックが終わったら・・・。どうやらはっきりしているのは、僕らに残された時間はおそらく「あと5年間」よりはずっと多いだろうということだ。選手たちにとって最後のオリンピックでも、彼らには彼らのこれからがあるし、時間はたっぷり残されている。しかしあえてオリンピックなんて通過点だよ、などと悠長な言い方する必要はない。「今しかないんだ。」という強烈な感覚は僕らを前に進ませるような気がするからだ。無闇に焦るべきだ、というのではない。でも「今、この瞬間に勝ちたい。」と思う気持ちが、勝利という結果とシンクロしたら、それは随分と美しいのではないかと思うのだ。少なくとも小野伸二はそんな試合を見たいと思っているだろう。

 4年に1度のオリンピックは、ワールドカップと同様にその歳月の重さを感じさせる。オリンピック選手と無縁な僕にもそのことは感じられる。僕らにはたっぷりと時間が与えられている。そして同時に、時は確実に流れ続け残された時間はどんどんと減っていく。次のチャンスはもう来ないかもしれないのだ。「Five Years」がとてもいい曲なのは、多分そのあたりの感情と関係があるに違いない。

 





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