FOOTBALL OR DIE
No.70
 ハラヒロミ連続殺人事件
文/ビワコビッチ(2002.3.13)

 まあタイトルはどうでもいい。ノリで書いているだけ。気付いたら1月以来書いて無かったfootball or die。最近もうこんな感じなんだな、自分にとってサッカーは、と思う。それはどうでも良くなってきたんじゃなくて、わざわざ文章を書こうという気が起きないくらい、もう日常になっているということ。きっと毎週のようにこのコラムを書いてた時期って、異常なくらいサッカーにはまっていく自分を必死で説明したくて、言い訳のようにキーボードを叩いていたんだな、と思う。今はもう言い訳とか関係ない。周りの人たちも同調してくれるか、もしくは諦めてる。だから楽。すごく楽。

 引越しをした。ケーブルテレビの契約をしたので、いっきに見られるチャンネルが増えた。今まではBSもMXも見られなかったのに、今はセリエAもリーガもFAカップもJリーグも、そしてなぜか契約してないチャンネルのピンク映画まで、見られるようになった。だけどやっぱり思い入れがないチーム同士の、退屈な試合はすぐ飽きてしまう。海外を無闇と有り難がるほどガキじゃない。だから、まあテレビはほどほどにして、やっぱり出来るかぎりスタジアムに行こう、というのが僕の結論だ。花粉症の人は辛い時期だけど、やっぱり外に出るってのはいいものなのだ。

 そのケーブルテレビのミステリチャンネルで『刑事タガード』の『レッドカード連続殺人事件』というのを見た。スコットランドの刑事物。2時間ドラマで聞くところによればスコティッシュ版『家政婦は見た!』みたいな(ホンマかいな)長く続いているシリーズものだそうだ。舞台は田舎のプロサッカークラブ。ある試合の後に審判が急死。その直後にチームの担当医が殺される。更に監督、フロントの人も殺される。そしていつも現場には謎のレッドカードが置かれている・・・一体誰が・・・?というもの。怪我でサッカー人生を棒に振ってしまったかつてのスター選手。実はサッカーが大嫌いな2代目オーナー。かなりブサイクなグルーピー3人娘(でもMFのウチ3人とやってる。ちなみにフォーメーションは4-4-2)とか、とにかくなんとも言えないアジのある登場人物と、すごくしょぼいサッカーシーンに魅せられて、気付いたらラストシーンだった。

 そう、簡潔に言うならいいドラマだったのだ。なんというか、サッカーが生活の中にある風景。田舎の風景。田舎の降格まぎわにチームなのに、一応グルーピーは食っちゃう選手たちの表情。かつての名選手は株で失敗したせいでグランドキーパーをやってなんとか生活している。そういった細部総てに、僕がまだ見たことのない風景を感じるのだ。派手派手しいヨーロッパのビッグクラブのサッカーを凄いなあ、とは思うけど、特段それを羨ましいとは思わない。僕が羨ましいと思うのは、当たり前のようにフットボールクラブが街にあり、当たり前のように街の人たちに愛され、当たり前のように週末には試合があり、そしてそれがきっと続いて行くんだ、という感覚だ。だからそんな感じが伝わってくるこのドラマはとても良かった。クラブで殺人事件があったばかりのその週の試合で、チームは勝つんだけど、選手も観客もすごく笑顔でガッツポーズなんだよな、人死んでんのに。そんな感じ。分かるようで分からない、まだ僕らがいる場所とは違うような感じ。

 そして僕らのシーズンがやってきた。なんだかノイローゼのように『スペインサッカー』とか『攻撃サッカー』とか唱え続けるFC東京/ハラヒロミの姿に、恐ろしいほどの不安を抱えながら迎えた開幕だったが、2連勝という結果に終わった。鹿島相手に爆笑じゃなくて爆勝。浦和相手に守りきって辛勝。どっちも面白かったし、こうやって確実に僕の生活の中に入り込んで来てる感じが分かる。なんだか1週間楽だもの。勝つと。

 そして僕が思ったのは、たった2試合終わった時点でいうことじゃないが『優勝だ!』という夢想である。僕は異常に疑り深くて、性格がねじまがっているので、『優勝目指して全力で頑張ります!』とかいう優等生の意気込みをきいてもなんにも思わない。10勝しても「これで降格はないな」とか言う男だ。だけど土曜日の試合、アマラオの姿を見ていたら、思ったのだ。「おじいちゃんが生きてる間にひ孫の顔が見たい」ならぬ「アマラオが元気な内に優勝を見たい」である。テレビ中継だったけどあの走りっぷりはやっぱり素敵だった。名前を覚えないことで有名なカモシューでさえ「11番」と言わずに「アマラオが効いてますねー」と言ったのだ。別に東京が本当に素晴らしくて強いサッカーしてるから優勝して欲しいと言ってる訳じゃ無い。そんなチームはまだ完成していない。それよりJリーグ自体ヌルくて甘いところもいっぱいあるから、ここらで訳の分からん優勝チームでも作ってショック療法を施した方がいいんじゃないか、と思うのだ。

 なにがヌルいかって、代表選手、代表候補選手に対する甘ったるい感じ、これに尽きる。なんだよ「ブルース」って!アホかTBS。とか「王者鹿島負けた!」といって東京のことに触れない報道とか、とにかくワールドカップを前にこの国は、根拠のない「仲間意識」を全面に押し出した批評性ゼロのジャーナリズムを持ち出して来ている。彼等によれば、Jリーグの重要性はワールドカップ代表選手選考の場としての意味が強いらしい。なんなのだ「豪華な中盤左サイドの争い」だの「決定力不足の代表候補FW」ってのは。決定的に間違ったミニマリズム批評。「くそくらえ」というのはこんな時に使うのだ、きっと。東京の開幕戦は鹿島の代表候補の力を測る為にあったのではない。

 そんな日本のサッカーを包む変な皮膜がぶっ壊れればいいのに、と思い、だからハラヒロミにはそんなヌルいリーグをぶっ飛ばすようなチームに仕上げて欲しい、というのが僕の願いだ。・・・・ここまで書いて、ビールをしこたま飲んだせいでそのまま寝てしまい、翌日になってなんとなくまとめようとしている・・・・。ネットを眺めると、三浦文丈が今季絶望だそうだ。一気に凹む。優勝と書いたことを少し後悔する。しかし、それでも次の試合はやってくる。荒れ狂う花粉のように、FC東京が様々な意味で涙を誘い、そしてリーグのシリアルキラーとして恐れられることを願う。僕自身も何かを壊し、そして何かを作ろう、と漠然と思う。それがワールドカップまでの日々の過ごし方になる。






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