デス博士の島その他の物語
ジーン・ウルフの「デス博士の島その他の物語」読了。
素晴らしい。イランの御曹司が未来の崩壊したアメリカを旅する「アメリカの七夜」はまさに傑作。「私」が書いている日記は、一部を削除され、ある夜は妄想であり、ある部分は真実であるらしい。だけど読者たる我々にはわずかな手がかりしか残されておらず、不安なままにアメリカをさまよう。
それは超絶技巧の美しさ。「文章」が我々に魔法をかける様を見せつけられる。ディケンズ、H・G・ウェルズ、幾多の作家の魔法がウルフの言葉によって更なる幻惑となって我々に襲いかかる。これほど記述者と読者の関係性を魅力的に書いた本を僕は知らない。なぜこのテキストの作者をあなたは信用することが出来るか?どこまでが本当か、なぜそれが本当か、どうやってあなたは知るのか?そして難解に思える言葉の連なりがいつしか不安定ながらも心地よい現実として認識出来たとき、我々は完全に小説の中の幻に取り込まれる。これはおそらくは読み返すほどに、新たな発見がある本なのだろう。
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