わたしを離さないで
カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」読了。
この小説に関しては、あまり内容に触れる訳にはいかない。良かった、とだけ書いておこう。先日本屋に行ったら、売れているからだろうか?「愛の流刑地」の隣に平積みにされていたが、断じてそういった類のクソ小説ではない。小説においては、構造と語り口が互いに相乗効果を生んで目の前に一つの現実を作り出す。そのお手本のような作品だった。
SF的骨格を持つ物語だが、その筆致があまりに見事なため、SF以外の人にも十分に届く。「知っているのに知らされていない」「知らないはずなのにうっすら知っている」という状況。ぼんやりと、しかし確実に我々が「知」を獲得していく様が実に見事に描かれていて、読者は完全にその疑似体験(もしくは追体験)をする。
グレッグ・イーガンならば同じテーマを10ページで書き終えてしまうだろう。それはそれで鮮やかな圧縮手法だが、こうやって長編で語ることでしか語りえない世界もあるのだ、ということを思い知らされた。
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