天の声・枯草熱

レム・コレクションで買ったはいいけど、途中まで読んで放置していた。「天の声」でどうにも集中できず、ついつい他の読みやすい本に流れてしまっていたのだ。ただ、今年になって「大失敗」が刊行されたので、これは先に出たレム・コレクションを片付けてから読みたいなあと思って一気に読んだ。
<天の声>
いわゆるファーストコンタクトもので、しかもそれ自体を否定するような構造になっているのがまさにレムの小説のレムたる由縁か。知性によりかかろうとすればするほど、大いなる不可知性に包囲される様子は、スリリングというよりコミカルですらある。
<枯草熱>
小説のタイトルだけは昔から有名だったけど、ながらく入手困難だったこの小説。タイトルはかれくさねつ、ではなくこそうねつと読むのはこれを買うまで恥ずかしながら知らなかった。これは紛うことなき大傑作。ミステリでありつつ、ミステリ自体を語り直すという試みにもゾクゾクするが、その細部で描かれるヨーロッパも実にクールで面白い。「謎」はそもそも「謎」であるのか徹底的に検証される。そして最終的に、我々は鮮やかな騙し絵のように小説というもの自体と向き合う羽目になる。これは実に気持ちのいい瞬間だった。
追記:枯草熱とは、花粉アレルギーの症状のことで、もし今訳すなら「花粉症」になるだろうとのこと。この小説の主人公は花粉症の元宇宙飛行士なのだ。多くの花粉症患者の皆様には、この本を読んでも症状の緩和にはなんの改善も見られないだろうが、なんとなく共感出来ていいかもしれない。レムの文章というのは、真面目くさった顔して実は下らないことを書いていたりするのも魅力なんだけど、その下らなさがまたクルッと回って深い思考へ繋がったりするから面白い。この小説における花粉症はそういった意味で最高のギミックだと思う。
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