book: 2006年7月アーカイブ

国書刊行会<未来の文学>第7回配本、「ベータ2のバラッド」読了。

「ニューウェーブ」な感じなのはディレイニーの表題作とベイリーの「四色問題」、ハーラン・エリスンの「プリティ・マギー・マネー・アイズ」で、キース・ロバーツの「降誕祭前夜」、リチャード・カウパー「ハートフォード手稿」はニューウェーブというより「英国風」と言った方がしっくりくる。まあ別に呼び方はどうだっていいのだが。

すっかり怠惰なSF読者となった自分には、こんな感じでSFを刊行してくれる信用出来るレーベルがあるのは嬉しい限りだ。装丁も好きだしな。アルフレッド・ベスターの「ゴーレム」が今から楽しみ。

ベータ2のバラッド

内田樹「ためらいの倫理学—戦争・性・物語」読了。

ためらいの倫理学—戦争・性・物語

現代思想のセントバーナード犬、としての筆者が放つ「わんわん!」というフレーズが可愛らしい。俺もこうゆうオジサンになればこれから先もモテるんではないだろうか・・と虚しくも楽しい夢想をさせてくれる素晴らしい本であった。「戦争論の構造」「性的自由はありうるか?」「性差別はどのように廃絶されるのか?」などなど、どれも今の自分にはフィットした。そして実に感動的な「越境・他者・言語」というテキスト。

ある綱領を信奉したり、ある信仰箇条を実践することによって、一夜にして「回心」がなり、すべてが美しい整序のうちに顕現するというような気楽な出来事は、「越境」についてはあり得ない。なぜならそれは「力仕事」だからである。毎日、毎日、身体を動かして、額に汗して、誰にも代わって貰うことのできない自分の責務を果たすように、こつこつと自分の言葉を鍛え上げていくことである。それはたとえて言えば「コミュニケーションの修行」ということである。

そう、その力仕事をやり続けることをやめると、人は安易な言葉で自分や世界を理解しようとするのだろう。なんとまあ勿体ないことであろうか。