cinema: 2007年3月アーカイブ
テアトル新宿で松ヶ根乱射事件。
長々と感想を書き散らすほどもないほど、良かった。いい映画だよ、と力説するのも違うような気がするが、かと言って力説しないわけにもいかない。
以下適当に映画的にタグ付けを行うとすると、
雪、犯罪・・・「ファーゴ」、「シンプル・プラン」
兄弟、田舎、木村祐一・・・「ゆれる」
田舎、一昔前・・・「殺人の追憶」
・・・みたいな感じになる。でも、ここであげた映画とはまったく別の、独特のムードというか停滞感とかエロがあって、こんなモッサリした感じを映画にしてみせるというのは、山下敦弘監督は素晴らしいという他ない。しかも、ただ停滞するわけじゃなく、時折オナラが漏れるように、「出てしまう」感じがたまらない。人生のほとんどの場面では、「出しました!」じゃなくて「出ちゃった」という方が多いのだから。
あと、主人公が車の中で突然吐くのは、「UNDER COVER JAPAN」のカンパニー松尾パートですね。これもまた「吐くぞ」という意志の全くない「吐いちゃった」である。
ユーロスペースでスーパー・ギドク・マンダラ、「ワイルド・アニマル」。
昔の三池崇史かと思うような、なんとも言えないインチキな感じと、全編に溢れるロマン?のようなもの。なんと言ってもパリの話だもんな。キム・ギドクの脚本に特徴的な物語の暴走・あるいは絵画的構造美はなく、あくまで因果律に忠実な物語が進行する。だけどやっぱり、白塗りやら冷凍の魚やら覗き部屋やらいかがわしいイメージが横溢していて、どうにも目が離せなくなる。あと最もセックスとは遠い映画なのに、もっとも女性の裸が多い映画かもしれない。不思議と愛着のわく映画だった。
ギドク祭りもとりあえずこれで一区切り。未見は「鰐」だけで、これは4/28からユーロスペースで公開。
ドリームガールズを見ました。
大ヒットしているのもよく理解出来る、よく出来た映画でした。この映画を見て人生が変わったりする人は相当のおっちょこちょい(別に悪いことではないですが)だと思いますが、実にうまく人間の感情が生まれて育っていく様が描かれているので、うっかりすると単純な感動の物語に見えたりするかもしれません。
「歌」が生まれ、それが「ポップミュージック」とか「商品」になるには、まずは圧倒的に感情に訴えかける何かが必要です。ただし、それを洗練し、血抜きし、大量生産可能なものにするには、別の努力が必要です。この原初の感情とビジネスの共犯関係を、幸福なものとして続けることは相当に難しいことであり、少なくとも巨大な規模でそれを続けられる人は、異様なまでに幸運(もしくは不運)だと言えます。
そして、この映画での成功者/敗残者が徹底的に単純化して描かれているのは正しいことだとも言えます。この映画はポップミュージックの構造そのままに、映画が実世界を剽窃し、それを単純化し、そのことによって多くの人と感情を共有するという構図になっています。薄暗いクラブで歌われたブルースは、間抜けなリズムの道化服を着せられて皆に愛想を振りまくのです。この映画は、そのことについて、いいとも悪いとも言っていません。ただ面白いと思うのか、絶望的に思うのか、どちらか選べと言われたら「面白い」に傾くように成分調整されているので、きっと多くの人に受け入れられると思うのです。
とりあえず僕は「ビヨンセ」という人をこの映画で初めて認識しました。圧倒的に化粧してないのがかわいいと思った。
水曜の夜。ユーロスペースでスーパー・ギドク・マンダラ、「リアル・フィクション」。
同病の方々はやはり熱心で、もっとも知名度のないこの作品もほぼ満員。「魚と寝る女」と「受取人不明」の間に撮影されたこの作品は、な、なんじゃこりゃ・・よくもまあこんな作品を・・というある意味で驚愕の作品(まあ全部そうなんだけど)です。ということで、以下は内容に触れていますので見る予定の方はご注意を。
日曜の朝。ユーロスペースでスーパー・ギドク・マンダラ、「悪い女〜青い門〜」。
邦題は明らかに「悪い男」に便乗してつけちゃったんだね・・という残念なものだけど、映画はやっぱり面白い。前日の深酒で猛烈に眠かったけど、最後まで全然寝なかった。海辺の街の、娼婦のいる民宿を舞台とするギドク的ホームドラマ。まるで舞台のような民宿の中庭、飯食うところ、娘の部屋、息子の部屋、娼婦の部屋、そして客の部屋という配置はそれだけで構成美を感じさせるのだけど、その美しさは容易には現れて来ない。海はひたすらどん詰まりを感じさせるし、登場人物もみんな何かやってくれそうな期待を持てない。だけど、毎日ちゃんと歯を磨いていればなんとかなるんじゃないか・・・という映画。違うような気もするけど。



