cinema: 2007年7月アーカイブ
土曜日。ポレポレ東中野で「ラザロ」。一挙に3本を見る。ラザロとは聖書に出てくる貧民の名で、死後4日目にイエスによって蘇らされたそうである。そしてこれは「格差社会」やその他諸々のこの世界に対して、真っ向勝負を挑むモンスターの映画である。「インディペンデント・プログラム・ピクチャー」とは公式サイトの言葉であるが、まさにその通りの3本だった。
『朝日のあたる家』
シャッターの閉まった店が延々と続く商店街の映像が、まるでホラー映画のように恐ろしい。そして余りにも凡庸で、あまりにも痛切なマユミの「人生」が、暗転/モンスターへの道へ繋がる様が、緊張感に満ちた映像で綴られる。(そしてどうしても自分の田舎のことを考えてしまう。)
『蒼ざめたる馬』
これは福岡の「黒い看護婦事件」が下敷きになっていると思われる短編。マユミさんではなく「マユミちゃん」と呼ばれてるのが面白い。「そんな甘い考えやから、世の中いつまでたっても変わらんねん!」とリアリティを持って叫ぶことが出来る人が、今の日本にどれだけいるだろうか?
『複製の廃墟』
さすがに一挙に3本は疲れてきて、途中何度かボーっとしてしまった。しかも何人かの出演者の演技でさすがにちょっと厳しいかな・・と思ったりして。ただし「贋札」というまさにこの世界の転倒をはかる試みを怪物マユミの次のテーマにするあたりは実にスリリングで、いささか語義矛盾だが「健全な世界の呪いかた」だと思うのである。
こんなに本気な映画を見たのは久しぶりな気がする。なんというか、一つも言い訳や斜めに構えたところがないのだ。インディペンデントだからとか、内輪に受ければいいやという空気は微塵もなく、ただひたすら、毅然として映画であろうとしている。この映画は、この3本で終わってしまうのだろうか?怪物マユミは、もっと暴れるべきではないだろうか?
水曜日。引き続きR18 LOVE CINEMA SHOWCASE VOL.3。
[思い出がいっぱい]
シャボン玉が乱舞する、バカバカしいまでに「青春」が詰め込まれた映画。紋切り型「青春」(田舎、片思い、タイムカプセル、夢、都会、挫折・・・)のフルコースであり、やはり最後の最後に思いは成就(つまりは濡れ場)するのであり、なんとも映画というのは便利なものなのである。ちなみに男子の青春の重要要素である「妄想」を一手に引き受け大活躍してくれるのが亡き林由美香さん演じる女教師で、これが実に素晴らしかったのです。
[恋味うどん]
2006年ピンク大賞ベスト10・第1位。吉沢明歩演じる主人公の白痴っぷりが豪快で、1本目との差に唖然としたが、こういう人情モノには「足りないキャラ」のピュアさは実に物語をスムーズに進行させてくれるし、なによりこの「花子」という主人公が本当にかわいいのでホッとする感じで安心して最後まで見ていられた。ラストの表情にやられる。
火曜日。ポレポレ東中野でR18 LOVE CINEMA SHOWCASE VOL.3。1週間限定上映だったのでもう終わっちゃいましたね。僕は2日間行ったんだけど、盛況でした。
[森鬼]
富士の樹海ロケのホラー。吉岡睦雄の演技がぶっ飛んでいて、樹海のぼんやりとした明るさ、監禁される室内のロウソクの明かりとか、悪夢的世界がいい。山本直樹のホラーもこんな感じがする。
[短距離TOBI-UO]
「癒し系ピンク映画」と銘打たれるだけあって、なんともかわいらしいコメディー。東京からやってきた娼婦と、その新しい仲間たち。青山えりなの素晴らしい笑顔と、熱海の青い海を見て、さあみんな、明日も頑張って生きようという感じ。まんまと癒されました。
↓予告編。
映画館でチラシを貰って知ったのだが「童貞。をプロデュース」がレイトショーで公開されるらしい。チラシのイラストは武富健治(「鈴木先生」)でした。
いや不覚。そういえば「完全生産限定盤」が欲しかったんだよ俺。ディスク2が欲しかったんだよ。完全に忘れてた。仕方なく通常盤を買って見た。まあこれはこれで非常にいいのだけど、フルコーラス版見たいよ。というかそれを通常盤として売ればいいのに。本当に限定にしなくてもいいだろうに。。と今頃になって恨み節。
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金曜日はもう1本。もうすぐ公開の夕凪の街 桜の国の試写会。
もう映画としてはかなりアレな出来(テレビっぽい演出、安っぽい音楽、感動を煽る回想シーンの多用・・その他諸々)なんだけど、要所要所で号泣してる自分がいたりして、あれ?人間の涙腺とはかくも無防備なものかと思った次第。要は漫画で泣けたポイントのシーンになると、条件反射のように涙が出たのである。試しに帰宅してからもう1回漫画を読んだら、同じように泣けたので、検証が出来ました。原作の素晴らしさを確認するという意味では、いい映画なのかもしれません。あと麻生久美子さんはとてもいいです。
金曜日。デヴィッド・フィンチャー監督のソディアックを見る。
ゾディアック(Zodiac)は、アメリカ合衆国の連続殺人者。1968年から1974年のサンフランシスコで警察が確認できた被害者5名を殺害。現在も犯人不明のまま、事件は解決されていない。1990年代には、ニューヨークでこの事件を模倣した連続殺人が発生した。以後ゾディアックは連続殺人の代名詞にもなる。
Wikipedia:ゾディアック
映画中にも出てくるが、「ダーティハリー」の犯人もこの事件が元ネタだったのだ。知らなかった。
2時間37分という上映時間は、まさにこの事件に「嵌った」人たちの時間を追体験させる為に必要な長さであり、映像はスタイリッシュで、しかも十分に恐怖をかき立てる。映画を見ながら「なんか体験したことあるな?この感覚・・・」と思ったら「殺人の追憶」を見た時に感じた鬱々とした感じ、だった。「わからなさ」が人を捕えて放さない様が描かれていて、見ている側もなぜか同じ罠に嵌ってしまう。
ジェイク・ギレンホールが演じる新聞社のイラスト係が、異様なまでに事件に執着し、引き寄せられていく様がいい。様々な情報がばらまかれ、それでも解けそうで解けない、得体の知れない犯人像。。この世界に溢れている「わからなさ」は、答えがものすごく簡単か、ものすごく難解かのどちらかばかりで、だからこそ人はゾディアックに惹かれるのかもしれない。強烈に「解きたい」と思わせるのだ。このくらいの難解さならね。
どうでもいいことだけど、妻役のクロエ・セヴィニーは、眼鏡が似合い過ぎだなあと思った。「ブロークン・フラワーズ」でも眼鏡だったような。。










