Punkchill 3rdアルバム『真昼の王国』発売記念ページ[その1]

Punkchill インタビュー

2008年10月8日リリース・Punkchill 3rdアルバム『真昼の王国』発売を記念して、インタビュー敢行。

Punkchill 3rd album
[真昼の王国]
2008.10.8 release

1. 数字のしずく
2. 穴
3. アマチュア
4. カミカ通りで
5. アフターナイトフィーバー
6. ヤヌス
7. 果ての果て
8. 沼を去る
9. WPW
10. toogaroo
11. 大人になって
12. 遠い行進
[Amazon] [Tower] [bridge] などでご購入できますので、左のインタビュー読み終わったら是非ご購入してください。

--- 今日のためにヨドバシのポイントでコレ買ってきたんで。一応先に声だけもらえますか?

あたろうあたろうです。

とみへんとみへんです。

ば くばくです。

--- じゃあ始めます。エー、このたびのPunkchill 3rdアルバム『真昼の王国』発売にあたってインタビュー的なことをやろうということで、いちおう何を聞くか事前に考えておこうと思ってたんですが、ヨドバシでどれ買うか悩み過ぎて何を考えていたのか・・・ちょっと思い出すんで、そのあいだに、このアルバムの特徴とか、教えてもらえますか。

全 員・・・

とみへん聴きどころ、とかそういうやつ?

あたろうインタビューとか受けたことないので何を言っていいのかわからない。えー、『Again』(前作)が抑えたトーンだったんで、楽しく明るく聴ける感じに・・・。

ば く開けたムードにしたかった。

--- なるほどね・・・エー、うっすら思い出してきた。あの、今までのプンクチルのアルバムを思い返すと、1stは、ともかくこんなのをやってみましたという初々しい感じがあって、2nd『Again』は我々が勝手に「演奏力のないプログレ」と呼んだ、ベースとなるムードみたいなものがあったと思うんですね、で、今回はなんというか、今までのプンクチルっぽい曲に加えて、共同プロデュースとしてクレジットされている中村宗一郎さんの手によると思われるサウンド面での新しい試みがビシビシあり、ゲストボーカルが登場する曲や、なんでそうなるか理由は良くわからんけど結果的に歌謡曲としか呼びようのない曲とかもあって、一言でまとめづらい多様さが見られるんですけど、今回はこういった「バラエティ豊かな感じ」を出していこうと思ったんでしょうか?

とみへんいや、プンクチルの場合は、できた曲をそのまま録っていくという方式なんで、あんまり後のことを考えない。その時の考えを元に録ったのが今回のアルバム、という。

あたろう例えば、いま言った「歌謡曲〜」な曲も、もともと歌謡曲の感じは好きでやってみたかったんだけどアレンジとかどうやったらいいかが分からない。メロディーが歌謡曲でバンド・サウンドとかいうのはあるけど・・・ので、中村さんに「バンド・サウンドじゃなくしたい」とかいろいろ曲録る前に相談して。前作でお願いした時より、だいぶ意思疎通ができるようになったので、この曲はこうこう・こういう感じで、というのをそのつど相談して、話し合って、進めた。

ば くあと、ライブで再現できるのかというのは考えずに、楽器重ねたり。

とみへん「(録音される)この曲をどうするか」ということだけ考えて。

あたろうあと、統一感がない、というのは単純に録音機間が2年間にわたっているので、その時期のみんなの聴きたい音とかやりたい曲とか・・・変わるじゃん。1年2年経ったら。温度も変わるし。

--- これ、録音はいつ頃から始まったんですか?

とみへん最初のレコーディングが去年の2月、ぐらい。で、ちょっとおいて、今年の2月から2回目のレコーディングを始めたんかな。

あたろうみんなのスケジュールもあるし、中村さんの都合もあるので。今回、いろんなことをやりたいという欲求ももちろんあったんだけど、そういう物理的な理由もあった。今後、コンセプトがあってキュッとしたものを作るか、というのは・・・どうすっかねえ、という感じかなあ。

新境地・結果的に歌謡曲としか呼びようのない曲の作り方

--- レコーディング中に、中村さんとガッツリやってます、という報告があったんで、これは相当音像面でけっこう凄くなりそうだなーという期待をしてて、こちらはもちろん予想以上の出来映えでヤッターという感じなんですけど、もうひとつ、驚いたポイントがあって。さっきも申し上げましたけど、「なんでそうなるか理由は良くわからんけど結果的に歌謡曲としか呼びようのない曲」、特に7曲目『果ての果て』とか、コレ意外に良くって、ビビりました。

とみへん意外にね。ンフフ。

--- 実を言うと、事前に「歌謡曲やるでー」って聞いてて、ヤな感じになってたらどうしよう、と思ってたの。

全 員ああ〜。

--- これがねえ・・・良かったねェ・・・。これは誰かの嗜好でこういう感じに?

あたろう歌謡曲は、みんな好きなんだけど、一番の歌謡曲好きはこの人で(とみへんを指して)。

とみへん最近、特にそう。

--- ここ最近、偶然にも個人的に薬師丸ひろ子再評価中なんで、よけいにグッときてね(以下、興奮して自論を数分展開したため略)要するに、アレンジとか装飾の部分じゃない、歌謡曲の本質みたいなものをネ!感じたんですよ。いい意味でびっくりした。

あたろうキーワードで挙ってたのは、まさにその薬師丸ひろ子とか・・・あと、オフコースとか。

--- オフコース?!

ば くそう、オフコース。

--- へぇ・・・でも、なかなかこういう具合にはできないよね。歌謡曲っぽい感じをデフォルメするような小器用臭さがないのが良いです。このへんの秘密を本日、つまびらかにしようと目論んでたんですけどね。

とみへんあー・・・あのう、要するに、ダサくなるのを恐れなかったのね。

--- あー・・・なるほど。潔よさがないとこの境地には至れないんだ。勉強になります!

ザ・中村指導

【中村宗一郎氏】
ゆらゆら帝国などの仕事で知られる、偉大なるレコーディングエンジニア。プンクチルとは前作からのおつきあいで、今回は共同プロデュースとして参加。スタジオ「ピースミュージック」における氏への仕事依頼はひきもきらず、相当多忙だとうかがっていますが、どうやってプンクチルとの作業の時間を捻出されたのかは謎である。サウンド&レコーディング・マガジン2008年10月号「禁断のサイケデリック・サウンド入門」に登場されているので、そのスジの方々はみんな読もう

あたろうでも、その歌謡曲っぽいやつも、実はけっこう細かい意見とか交わしてやったんだけどね。音選びの時に、中村さんにキーボードの音色を80年代っぽくしてって言うたら、「80年代っぽいキーボードっつわれても分かんないよ!」って怒られたりして。・・・あと、ドラムの音とかが、前と違うと思う。あ、今まではせーので、一発録りだったんだけど、今回は楽器はぜんぶ別録りで。

--- あ、それはミックスダウンとか、後工程でやりやすくするために?

あたろうそう。なんだけど、今回みっちり言われたのは、(足りない部分を)ミックスで何とかしようというのは駄目で、録り音が一番大事ということ。良くするためには、録りの音を変えていかないとだめだ、とすごく中村さんに言われて。そこで、あたしたちの意識もワッと変わった。

ば く後で、なんかしてもらえるんじゃないかと思ってたところに、「最初に録った音ありきです」という強い指導がありまして。

--- やっぱり中村さんの存在というか、ご指導は大きかったですか。

ば くうん、いつになく強いご指導が、ハハハ、あった。

あたろう音録るより、どうするか話し合ってる時間の方が長い日もあったし。

--- へえ・・・今回、共同プロデュースというクレジット以上にガッツリ中村さんに関わってもらった、という話はチラホラ伺ってたんで、せっかくだからジャケットも4人で写った方が良かったんじゃないのか、とか言ってたんよ。

とみへん(中村さんは)オビで隠れてたりとかね。

--- ハハハ。本人から、今作の感想とか何か言われました?

あたろうそゆことは、あんまり言わない。ま、なんとかまとまったねみたいなことぐらいで。中村さん的には、最後の調整がやっぱり凄く難しかったみたい。今回ほど時間かけてもらったのはないもんね。何か、あたしたちが「いい」って言ったとこも、あそこ気になるって直してたから。

--- それは、主にどういうところを?

あたろう「音の像」みたいな感じかなー。

とみへん「ちょっと明るめにした」とか言われるんだけど、どこをどうやってそうしたのかはあたしらにはわからない(笑)

ば く「音の湿度が変わった」とか、「充分快適だけど、より爽やかになった」とか・・・全然わからない(笑)

あたろう前作はこう、お互いの探り合いみたいな感じだったけど、今回はもう話して話して話しまくって、プンクチルでできることを一緒に考えてもらって。こういう言い方したらこいつら理解できるなとか・・・

とみへんそれをね、あたしら一人一人の性質まで把握してもらってね(笑)。

ば くこいつにはこういう言い方をすれば理解できるだろう、という感じで(笑)

あたろうでも面白がってくれたと、思う。

とみへんうん、面白がってたよね。

あたろうたくさん話し合ったのでキツい瞬間もあったけど・・・何だったかは忘れた(笑)。言われた内容に関してはどれも納得できることだったんで。でも、曲づくりのこととかまで言われるようになったのは今回が初めて。

--- へえ・・・具体的には?

とみへんそれは、あの、歌と本人のキーが合ってないとか(笑)。ちゃんと考えて作れ!って。

--- ハハハ!それはまたエラい基本的なとこから。

あたろう普通のバンドは、なんかホラ、あのギターをそのエフェクター通してこういう音で・・・って言えるけど、あたしらそういうのが言えなくて、「雲がー」「空がー」とかイメージで説明するんだけど、そのイメージを、こう・・・内容を理解して作業に落とし込むスピードが中村さんは凄く速かった。

--- なるほどね。今回はレコーディングの印象がかなり強かったみたいで、曲とかの説明とかより、このアルバムをどうやって作ったかの話ばかりになるね。

あたろううん、今回のレコーディングはほんとに面白かった。ちょっとないぐらい面白かったな。

お砂糖でみんなハイになってた

【punkchill】(プンクチル)
愉快で切ない、奇妙だが愛らしい、独特のゆらぎ感は「音楽に疲れたら聴く音楽」 「へべれけ女性トリオ」等と称される。ロックが好きな面々はもちろんたいがいなものは褒めない頑固な音楽ファン達からの支持を得る。[WEB]
プンクチル近影:写真左から、b,vo:タガミアキコ(あたろう)/g,vo:コヤマヒトミ(とみへん)/dr,key,vo:ハネダアキ(ばく)

あたろうあと、重要なのは雑談。

とみへん雑談雑談。プンクチルも、練習終わったあとモスバーガーで何時間も雑談するんだけど、それがちゃんと音に還元されてて。同じように、スタジオでの中村さんとのズーッと話してた内容も同じようにちゃんと音にフィードバックされてる。

ば く雑談の内容も、一人一人の性質を把握してね。

とみへんあたしは格闘技とラーメンの話(笑)で、あたろうはなぜか不思議系の話ばかり振られてた(笑)。

あたろうそうそう。こないだ人魂を見たよーとか。

--- 人魂・・・

あたろうあ、あ、あとお菓子めっちゃ食べてた。スタジオ入る前に、おのおのがお菓子買って持っていくねんけど。

ば くそのお菓子が、なぜかみんなバラバラでかぶらない(笑)。

あたろうそれを机の上にブワーッて並べて。

とみへんもうズーッと食べてるから、お菓子(笑)。

あたろうお砂糖でみんなハイになってたんちゃうかな。お互いに普段言えないことも言ったし。

とみへんそうそう。あたろうはココがこうだよ!とか、割とはっきり。普段抑えてることを、スタジオに行くと、酷いことを(笑)言うようになったりとか。

あたろうあ、あとあたし友達おらへん!って不安になったりした。

--- へ?

あたろう励まし合ってレコーディングするんだけど、今回、自分のとこは自分で解決しないと誰にも頼れないんだ!ということを切実に感じて。

ば く自分の面倒は自分でみようって。

とみへんそういう修行の場みたいなとこ、あったな。

あたろう録音している曲が好きになってくると、この曲のために自分が頑張らないといけないと思うようになって。前はもっと恥ずかしくて、自分を守るようにしてたとこもあったんだけど、今回は弱っちいことを言っててはいかん、この曲に奉仕せねば!って。

ば くそう、捧げねば!って。

あたろうで、それで不安になって「友達おらへん」って思ったりして。でも遊びみたいなとこもあり・・・不思議な感じ。

・・・と、ここまで40分ぐらい。この後、インタビューは雑談に転じて延々2時間近く続き、女性バンドのありようとか、嫁と姑の話とか、将来の話とか、中年の自意識のありようとかに話は及ぶんですが、全部文字起こししてったら発売に間に合わないと判断、とりいそぎ新譜に関するトークを繋いで、掲載することにいたしました。続きを希望される方は連絡下さい。(インタビュー/こぐまレコード更新係)

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